スメタナが祖国ボヘミア(チェコの中心地域;中心都市はプラハ)を称(たた)えた交響詩。交響詩とは、音楽で物語をあらわしたもの。「わが祖国」は6曲からなる。
第1曲は「ヴィシェフラト(高い城)」。プラハの南、ヴルタヴァ川の東岸の丘の上の古城がヴィシェフラト。このヴィシェフラトで繰り広げられた歴史を、吟遊詩人のハープが語り始める。
第2曲は「ヴルタヴァ(モルダウ)」。この主題は、合唱曲に編曲されている有名なもの。多分誰でも1度は合唱を聞いたことがあるはず。水は「水源」を発し、「森にそって流れる」。「角笛がこだま」して「村人の踊り」が行われている。「月光」が差し「水の精」も現れる。夜のうちに川は「水量を増して」いく。「聖ヨハネの急流」を過ぎるころ、川はプラハに入り、「古城ヴィシェフラト」に迎えられる。プラハを過ぎた川はやがて「はるか遠くへと流れ去って」行く。
第3曲は「シャールカ」。若い女戦士(アマゾネス)シャールカは、恋人に裏切られる。それからというもの、彼女は男に敵意をたぎらせて、アマゾネス軍を組織する。男性によるアマゾネス追討軍が、ツィラートに率いられてやってくる。シャールカは木に縛りつけられたふりをする。ツィラートはシャールカを助ける。追討軍に潜入できたシャールカは、兵士たちを酔わせ眠らせる。彼女の合図でアマゾネス軍が追討軍に襲い掛かる。ツィラートはじめ、追討軍は皆殺しの目に遭う。
第4曲は「ボヘミアの森と草原より」。ボヘミアの美しい自然を称えた賛歌。森・草原・渓谷、美しい風景画が、音楽によって描かれる。
第5曲は「ターボル」。ターボルとは、ボヘミア南部の町で、15世紀はじめ、ヤン・フス率いるキリスト教の宗教改革フス派の本拠地となったところ。フス自身はコンスタンツ公会議で異端者(いたんしゃ)の烙印(らくいん)を押され、火あぶりの刑に処せられている。しかし、民衆は彼を英雄と仰ぎ、フス派戦争を起こす。ローマ教皇(法王)の命で神聖ローマ皇帝が組織した十字軍は、このフス派に負け続ける。これは宗教の他に、ドイツ・オーストリア人に支配されるチェコ人の不満が関係している。フス派の抵抗を描いたのがこの曲。
ちなみに、この前お亡くなりになったローマ法王ヨハネ・パウロ2世は、コンスタンツ公会議でヤン・フスを異端者としたことが間違いであることを認め、正式に謝罪した。1999年のことであった。
第6曲は「ブラニーク」。ボヘミア中部と南部を分けているのがこの山。この山中には、チェコ人の危機を救う騎士たちが眠っているという伝説がある。形勢の悪くなったフス派は、この地に逃れ、チャンスを待っている。きっと勝利するであろう。
祖国への 愛を凝縮 五線譜に |
たつく |
(準器語:五線譜) |
© April 14th, 2004 ちゐく たつく
聴いた録音のデータ | ||
オーケストラ | チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 | Czech Philharmonic Orchestra |
指揮 | ヴァーツラフ・ノイマン | Vaclav Neumann |
時期と場所 | 1982年11月 | 東京文化会館 |